思い切りの良さが、仰天のプレーを生んだ。2-0の4回1死、三走・城島。ベンチからのサインはスクイズ。右腕バーランダーは「城島のスタートが目の端に入ったから、カーブの握りは変えられなかったが、バットの届かないワンバウンドで投げた」。名捕手の“パッジ(ずんぐりむっくり)”ことロドリゲスが胸でブロックした球は、三塁線にコロコロ。慌ててボールを2度も拾い損ねる間に頭から本塁に滑り込み、セーフだ。城島はうつぶせのまま、ニンマリと笑った。
「もちろん単独スチールのサイン。新聞的には“本盗、本当!?”って書くのかなあ」。上機嫌のジョークで周囲の笑いを誘うと「半分まで行ってたからどうしようもない。(三塁に)戻ってもアウト」と振り返った。
メジャー3年間で計4盗塁(今季は1)。無警戒時に走るのが得意だったホークス時代は11年間で63盗塁を記録したが、本盗はなかった。マリナーズの捕手では、1999年8月1日のダン・ウィルソン以来で、21世紀初の珍事だ。
リーグトップ24盗塁のイチローは目を点にして「通常はありえない。二塁への盗塁も(ほとんど)ない人間がホームスチールなんて、なかなか珍しい」と言うと、果敢な走塁を大絶賛した。
「ああいうプレーでは普通(三走は)止まってしまうことが多いが、ジョーははっきりしていた。中途半端な選択をしないのは、頭を使って次のことをいろいろ考えている証拠」
ただ、城島に日本人メジャー初という達成感はない。「ゲームの中では良かったが、僕の人生、野球の成績にあってもなくてもいいもの。興味はない」。イチローが一度は本盗をしたいと語っていたことを聞くと「それならイチローさんと、ヒット1本と交換したいですね」。何よりも、勝ったからこその軽口だった。
(シアトルポスト・インテリジェンサー紙記者)
中日新聞
サインて覚えるの大変そうですよねぇ