八回。先頭で今季100本目の安打をライト前へ運んだ阪神・金本が一塁に立った。リードは1点。途中出場で5番に座った葛城はバントの構え。初球、117キロのスライダーにバットを引く。そして2球目。左腕丸山の視界から一塁走者が消えた。133キロ速球がミットに収まる。捕手川本が二塁へドンピシャの送球をみせるが、金本の右足がグラブをかいくぐった。左ひざを折り畳み、宙を舞うスライディング。“全盛期”とそん色ないフォームで二塁を奪った。その後三進し、桧山の三ゴロで2点目の生還。この日腰痛でスタメンを外れた新井の出迎えに笑顔で応えた。
「盗塁はサイン?まあ、新井と食事したら、クレジットカードにサインしてるよ」と、切れ味抜群のボケで報道陣を笑わせた金本も、走りの“切れ”を問われると「まだまだ。若いころのあれ(走り方)がよみがえってこないよ」と照れ笑いを浮かべた。
広島時代の95年から14年連続の100安打到達。金本にとって皆目興味のない数字だが、盗塁から得点につなげる価値ある一打に「点が入ればいい」とうなずいた。
今季最後の地方遠征となった前日倉敷でのヤクルト戦。マジック点灯がかかったが、川島亮の前に4打数無安打に封じられた。倉敷マスカット球場は、10年前に金本が苦手にした左腕克服を誓った場所。98年1月14日から10日間、同球場を借り切り、知人の左投手を雇って1日4~5時間、打ち込みを行った。その際、金本が球場に持ち込み筋力強化に励んだフリーウエートの器具は、寄付として、いまだに球場室内に保管されている。
左腕村中に3打席音なしに終わったが、4打席目は左腕丸山をとらえた。弟分新井の故障欠場でVロードに影を落とすわけにはいかない。1267試合連続フルイニング出場。4番在位球界最長の40歳。金本は元気だ。
デイリースポーツ
おもしろい選手っていいですよね